日本のミュージカルのために。。。


by zatoumushi
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

▼078「屋根の上のヴァイオリン弾き」(再演)▼

★屋根の上のヴァイオリン弾き

@日生劇場

東宝 製作

1975年 2月 4日〜28日

再演


【掲載内容】

ごあいさつ / 雨宮恒之

“屋根の上のヴァイオリン弾き”日本公演に際して
        / ジェローム・ロビンス(初演プログラムから再録)

“屋根の上のヴァイオリン弾き”/ サミー・ベイス

舞台はいいですね ほんとにいいですね
          「屋根の上の―」の初演を観て…… / 菊田一夫

「屋根の上のヴァイオリン弾き」について / 倉橋健

フィドラー・オン・ザ・ルーフに寄せて
             / 盛田昭夫(初演プログラムから再録)

何事にもしきたりがある 伝統的なユダヤ人の生活習慣


【舞台はいいですね ほんとにいいですね】

今日、病院から外出の許可がでました。明日は帝劇の“屋根の上のヴァイオリン弾き”を、はじめて観にゆきます。病院の昼の食事(正午)と夜の食事(五時)との間、約四時間の制限付き外出ですけれど(病院外での食事は一切禁止)。担当の萩谷先生から「観たいでしょうから許可してあげましょう。但し、もう大丈夫だ、などといって帰ってこなかったりしたら、大変なことになりますよ」。そして立原婦長さんから「見張りを一人つけますよ」。かくして監視付き観劇と相成りましたが、私は許可が出ても、もっと先だとばかり思っていたので……夢かと喜んでいるところです。
明日は“屋根の上の―”が見られるんです。そして調子がよければ、もちろん病院に寝泊まりの制限付き外出ですが、そのうちに他の芝居も見られるし、本社の演劇部にも顔を出せる。病院ではいろんな検査があるので、いまだに面会謝絶ですが。……だから演劇部の連中とも、劇場の連中とも、そして舞台とも、劇場の客席とも……もう二ヶ月以上も会っていないのです。明日は、とりあえず“屋根の上のヴァイオリン弾き”の舞台だけ見たら、時間の関係上、誰とも会わずに病院に帰って来なくてはならないのです。

前項の翌日に記す。
帝国劇場は、病気前と同じ顔で私を迎えてくれました。この劇場の建設のために私は身体と心がすり減ってしまうほどに力を使いました。劇場の入口の壁に頬をすりつけたい程のなつかしさでした。さて客席の椅子に座って……“屋根の上のヴァイオリン弾き”の開幕のヴァイオリンの音が聞こえたとき、私は普通のミュージカル好きのお客様のように胸をドキドキさせました。そして幕があいて、森繁君が出て、続いて村人大勢(合唱)が出てきたら、胸に何だか知れない熱いものがこみあげてきて、涙がボロボロとこぼれてきました。まだ泣く場面でもないのに恥ずかしい、と思って、押さえようとしましたけど、涙はとまらないのです。自分が力をいれたミュージカルの開幕を見て、改めて、自分は生き返ったのだ。よかったな、と、感激したのでしょうか。それとも、自分の留守の間、舞台を守って闘っていてくれた森繁君たちの姿がいじらしくて涙がこぼれたのでしょうか……私にも判りません。とにかく幕があいて、役者が出てきて歌う姿を見たら、馬鹿のように涙がこぼれたのでした。
舞台はいいですね。ほんとにいいですね。


菊田一夫

[この稿は、一昨年(一九七三)四月逝去されました劇作家重役、前東宝専務・菊田一夫氏が昨年まで刊行されていた雑誌「東宝」の巻頭に連載の“落穂の籠”第十二回(昭和四十二年十一月号)の文中後半を採録いたしました。当時「屋根の上のヴァイオリン弾き」帝劇初演(昭和四十二年九、十月)の製作半ば病に倒れ入院中の氏が、病を押して初日の舞台に立ち合われた感想文です。]
[PR]
by zatoumushi | 2008-02-24 14:51 | ▼プログラム▼